時間計測

プログラムのパフォーマンス (実行速度) や性能上のボトルネックを評価するためには，プログラムの特定部分の処理時間を計測する必要がある．また，プログラム内で処理時間を要している箇所を探すことにより，アルゴリズムやデータ構造の変更などのパフォーマンス・チューニングを行うことができる．

測定する時間には，

実時間
プロセッサ (CPU) 時間
ユーザ CPU 時間，システム CPU 時間

があり，それぞれ測定方法が異なる．

プログラムの処理時間を計測する方法 (時間計測関数，コマンド) の代表的なものを挙げる．

clock 関数

書式

  #include <time.h>
  clock_t clock(void);

機能
プログラム実行開始からの経過時間（プロセッサ時間）を返却する．返り値は clock_t 単位での CPU 時間である．秒単位での値を得るためには CLOCKS_PER_SEC で割ればよい．使用したプロセッサ時間が得られない場合や，その値を表現できない場合，(clock_t) -1 を返す．
clock 関数を 2回呼び出し，経過時間の差を求めることにより処理時間を算出することが出来る．
1. 処理の開始時間を記録
  clock_t start = clock();
2. 処理時間の計測を行いたい処理を実行
3. 処理の終了時間を記録
  clock_t end = clock();
4. 処理時間を取得
  end - start
経過時間の精度は処理系に依存する（通常，ミリ秒）．

gettimeofday 関数

書式

  #include <sys/time.h>
  int gettimeofday(struct timeval *tv, struct timezone *tz);

機能
時刻とタイムゾーンを取得する．戻り値は，成功時 0，失敗時 -1 (errno を設定) である．gettimeofday で取得する時刻は UNIX　エポック（1970年01月01日00時00分00秒：UTC）からの秒数である．
通常は tz 引き数に NULL を指定する．UNIX/LINUX 系 OS で使える．
tv は以下の構造体である．
```
  struct timeval {
      time_t      tv_sec;     /* 秒 */
      suseconds_t tv_usec;    /* マイクロ秒 */
  };
```
gettineofday 関数を用いればマイクロ秒の精度まで計測が可能となる. gettineofday 関数は time関数 (秒単位計測) 同様に実時間計測を行う.

getrusage 関数

書式

  #include <sys/time.h>
  #include <sys/resource.h>
  int getrusage(int who, struct rusage *usage);

機能
getrusage() は who の資源 (resource) の使用量を返す．成功した場合は 0 が返される．エラーの場合は -1 が返され，errno が設定される．UNIX/LINUX 系 OS で使える．
who には以下のいずれか一つを指定できる．
- RUSAGE_SELF
  呼び出したプロセスの資源使用量，そのプロセス内の全スレッドが使用している資源の合計を返す．
- RUSAGE_CHILDREN
  呼び出したプロセスの子プロセスのうち，終了して待ち状態にある全プロセスが使用している資源使用量の統計を返す．これらの統計情報には，孫プロセスやその子孫のプロセスの内，削除待ちのものが使用している資源も含まれる．
- RUSAGE_THREAD
  呼び出したスレッドに関する資源使用量の統計を返す．
資源使用量は usage が指す構造体に格納されて返される．構造体は以下の形式である．
```
struct rusage {
   struct timeval ru_utime; /* 使用されたユーザ CPU 時間 */
   struct timeval ru_stime; /* 使用されたシステム CPU 時間 */
   ・・・ /* CPU 時間に関するもののみ．以下，省略 */
};
```
getrusage 関数を用いれば gettimeofday 関数と同じようにマイクロ秒の精度で，プロセス占有時間とシステム時間の 2 つを得ることができる.

QueryPerformanceCounter 関数

書式

  #include <windows.h>
  BOOL QueryPerformanceCounter(LARGE_INTEGER *lpPerformanceCount);

機能
QueryPerformanceCounter() は，Win32 API で用意されている関数で，高分解能パフォーマンスカウンタが存在する場合，そのカウンタの現在の値を取得する．精度は環境に依存するが，1 ミリ秒よりも小さくかなり精度が高い．
カウンタの値は引数のポインタが指す場所に格納され，カウンタを取得できた場合は TRUE を返す．
次の手順で利用する．
1. 変数定義
  LARGE_INTEGER start, end;
2. 処理開始時間の記録
  QueryPerformanceCounter(&start);
3. 処理時間計測の対象処理を実行
4. 処理終了時間の記録
  QueryPerformanceCounter(&end);
5. 処理時間の取得
  end.QuadPart - start.QuadPart　で処理時間の数値を得る．
  このようにして取得した数値の単位は「QueryPerformanceFrequency(LARGE_INTEGER *)」で取得する．秒に変換したい場合は，「LARGE_INTEGER freq; QueryPerformanceFrequency(&freq);」で予め単位を習得しておき，結果を freq.QuadPart で割る．

time コマンド

形式

  time [option] command [arguments...]

機能
指定されたプログラム command を渡された引き数 arguments で実行する．command が終了すると，このプログラムの実行時間に関する以下の情報を標準エラー出力に出力する．
- real
  起動から終了までに経過した実時間（秒）
- user
  プログラム自体の処理時間（秒）（ユーザ　CPU　時間）
- sys
  プログラムを処理するために，OS が処理をした時間（秒）（システム CPU 時間）