暗号の数学
集合と写像
集合
- 集合 (Set)
ある物(対象)の集まりで,以下の性質を持つものを集合と言う.
- ある対象がその集合に属するかどうか判断できること
- 集合に属するある2つの対象が同一のものかどうか判断できること
対象が有限である集合を有限集合,対象が無限にある集合を無限集合と言う.
- 集合の要素(元)
- 集合に属する対象
- 元 a は集合 A に属する(含まれる)
a ∈ A,A ∋ a
- 集合の大きさ
有限集合の元の数 : |A|
集合の表現
- 外延的記法
K = {1,2,3,4,5,6,7,8,9}
K = {1桁の自然数}
- 内包的記法
- K = {n | n は1桁の自然数 }
- A = {x | P(x) }
P(x) は x についての条件
例):
N = {x | x は自然数}
P = {x | x は 0 < x < 1なる実数}
S = {k | -10 < k < 10}
- 部分集合 (Subset)
- 集合 A のすべての元が B の元でもあるとき,A は B の部分集合と言う.
- A は B に包含される(B は A を包含する)という.
- A ⊂ B または B ⊃ A と表す.
- A ⊂ B ⇔ (∀ a ∈ A → a ∈ B)
- A ⊂ B かつ B ⊂ A のとき,A と B は等しい.
A = B ⇔ (A ⊂ B ∧ B ⊂ A)
- A ⊂ B かつ A ≠ B のとき,A は B の真部分集合(proper subset)と言う.
順序対と直積
- 順序対 (ordered pair)
(
a, b) : 順序を持つ2つの成分の組(第1成分,第2成分)
- 集合 A,B の直積集合
A × B = {(x,y) | x ∈ A, y ∈ B }
|
A × B| = |A| × |B|
- n 項組 (n-tuple)
(
a1, a2, a3,..., an)
- n 次の直積集合
A1 × A2 × ・・・ × An = {(a1, a2,..., an) | a1 ∈ A1, a2 ∈ A2,・・・,
an ∈ An }
関係 (relation)
- 2つの集合 A,B の直積集合 A × B の任意の部分集合を A から B への2項関係(関係)という.
- x ∈ A が y ∈ B と R なる関係にあるとき xRy (または,x ~ y)と書く.
- A = B のとき,A の上の関係
逆関係
- B から A への関係 R の逆の関係: R-1
- xR-1y ≡ yRx
- R-1 = { (x, y) | (y, x) ∈ R }
同値関係
集合 A 上の関係 R について,以下の条件を満たす時,R を同値関係と呼ぶ.
- 反射律
x ∈ A → (x, x) ∈ R
- 対称律
(
x, y) ∈ R → (y, x) ∈ R
- 推移律
(
x, y) ∈ R ∧ (y, z) ∈ R → (x, z) ∈ R
同値類
関係 R を集合 S についての同値関係とする.
x ∈ S に対して x と同値な元を集めた S の部分集合を S(x) と書く.
S(x) = { z ∈ S | z ~ x }
このとき,任意の元 x,y に対し,S(x) と S(y) は,S(x) = S(y) か S(x) ∩ S(y) = Φ のいずれかである.
S(x) を同値類(equivalent class)と呼ぶ. 同値類の集合 {S(x) | x ∈ S} を S の同値関係 R による商集合と呼び,S / R で表す. 同値類を S(x) と書く時,x を代表元と呼ぶ.
(例) 整数の集合 Z における3を法とする合同関係
- xR3y: x ≡ y (mod 3)
[0]=[3]=[6]= ・・・: 3で割り切れる整数
[1]=[4]=[7]= ・・・: 3で割って1余る数
[2]=[5]=[8]= ・・・: 3で割って2余る数
Z = [0]+[1]+[2] : 3つの同値類の直和
Z / R3 = {[0], [1], [2]}
写像
- 写像 (Mapping)
集合 X から集合 Y への関係 M が,次の2条件を満足するとき,関係 M を写像という.
- X の任意の元 x は必ず Y のある元に関係する(任意の x ∈ X に対し,xMy となる y ∈ Y が存在する).
- 1つの x が異なる2つ以上の y に関係しない (x1,x2 ∈ X, y1,y2 ∈ Y で,x1My1,x2My2 のとき, y1 ≠ y2 ならば x1 ≠ x2).
X から Y への写像 φ
- φ : X → Y
- φ(x) : x ∈ X, φ(x) ∈ Y
- 写像の性質
- 全射
Y の任意の y に対して X に原像が存在する. すなわち,
X のすべての元 x を写像させたものが Y になる.
- 単射
f (x1) = f (x2) ならば x1 = x2,x1,x2 ∈ X,f (x1), f (x2) ∈
Y
- 全単射
写像が全射でかつ単射(上への1対1写像)
全単射なる写像を同型写像と呼ぶ.